臼井良平

encounter

2009 11.20 - 2009 12.19

臼井はこれまで、私たちの身近にあるものを主役に、ゼロから新しい何かをつくり出すというよりは、すでに存在するものの「見方」を変える、現代版「見立て」ともいえる作品を発表してきました。

前回の個展「Flying goza mat」では、空中をひらりと翻るござが写された、日本版アラビアンナイトともいえる写真作品「空飛ぶござ」や、日本最大の無人島を、手のひらほどのサイズに縮小し毛糸で形作った「人のいない島」、モノクロで撮影された巨大な石の写真の背後に光源を置き、壊れた看板のようにみせた作品「Gray Sign」を発表しました。一見するとどこかで見たことのあるような、既視感を感じさせる身近な場面や物が、臼井のユーモラスな着想や意図によって、これまで見ていたものとは違うものへと、「見え方」が変わる瞬間を独特の視点で提示しました。

今回の個展「encounter」では、複数のシリーズ作品を発表いたします。タイトルの「encounter(遭遇)」とは、「思いがけず、偶然的に何かと出会うこと」を意味しますが、今回臼井は「ふだん何気なく目に映っていただけのものを、はじめて”存在”として認識する」という意味で「encounter(遭遇)」と名付けました。思わず見過ごしてしまいそうな物や事象も、気持ちのありようによって見え方が変わるし変えることができる、ということを、臼井の多様な表現手法によって具現化します。

また今回臼井は久しぶりに(無人島でははじめてとなります)、ペインティングによる連作「遭遇」を発表します。臼井のペインティングは2003年に発表した「おでんとう」(参照)以降長らく発表されることがありませんでしたが、今回実に6年ぶりとなるペインティング作品を発表します。この「遭遇」では、不意に目の前に現れた動物などが、亡くした誰かに見えてくるという自身のエピソードをもとに、風景の中に生き物が存在する光景が描かれています。その他にも、街中に放置されている「瓶」や「ペットボトル」などを撮影した写真シリーズ「Forgotten liquid」や、昨年発表した鏡にサンドブラストを施した「結露」シリーズをさらに発展させた新作も発表いたします。

無人島プロダクション2009年を締めくくる臼井の本新作展をぜひご覧いただきたく、どうぞよろしくお願いいたします。