風間サチコ
プチブル
2014 1.9 - 2014 1.19無人島プロダクションはこのたび風間サチコの初期作品による「プチブル」展を開催いたします。
風間サチコは木版画を表現に用いる東京在住の美術作家であり、浮世絵からマンガに至る日本の民衆的なプリント文化の長い伝統を度々思わせる独自のスタイルで知られています。版画は本来は複製の手段であるという考えに反して、風間はひとつの作品につき一枚しか制作を行いません。風間にとって木版画という技法は、自身と対象の間に距離を置き、激しい感情と静かな観察を同時に作品のなかに実現するための手段となっています。
風間の作品はあるときはコミカルで遊び心に満ち、またあるときは繊細で美しいものですが、さらに深く立ち入っていくことで、風間のすべての作品には現代社会への真剣な省察と権力の変わらぬ本質への辛辣な批判が込められていることがわかります。風間は歴史への注意深い調査を行い、過去と現在を重ね合わせ、あたかも迫り来る暗黒の未来を私たちに警告するかのような、ほとんどばかげているような空想の場面を創り出します。版画において白と黒が反転するように、風間は真実から嘘を抉り出し、嘘から真実を描き出すのです。
「プチブル」展は1998年の初個展から2003年までの初期作品を展示し、最初期より一貫している風間の作家としての核を示します。この時期の風間は世界でもっとも物質的に豊かであるはずの「日本・中流階級」に着目し、成長神話、消費と植民地主義、自然の商品化などの様々な主題を意識的に探訪しながら、今日では世界的な関心となっている後期資本主義社会とその望まざる帰結の本質を作品へと昇華しています。また、経済ナショナリズムが再び台頭しつつある今日の日本社会は、そうした根本的な問題が今も続いていること、そして風間の作品の今日における重要性を裏付けるもののひとつでしょう。
「プチブル」展は風間のユニークな作家活動だけではなく、私たちが当たり前のものとして捉えている社会・制度・価値を理解する上でも鍵となるものでしょう。11日間と、大変短い会期ではありますが、ぜひお越しいただき、展示ををご覧ください。