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3 min. 35 sec., Filming by : Yukari Hirano
毎日、道路が渋滞しているジャカルタ。世界で4番目に渋滞がひどい都市である。
オランダからの独立後、ジャカルタは経済発展を遂げる一方で、人口を過密させてきた。世界の都市圏人口ランキングで、東京に次ぐ、2位の3,176万人*(2017年時点)。なぜ、東京がジャカルタ以上の人口を持つのに、世界の渋滞都市のランク外なのか?(肌感覚的には東京の渋滞も十分ひどいが。)
それは交通インフラの違いにある。東京に比べてジャカルタは、電車やバス路線の本数はさることながら、信号機が少ない。ジャカルタ市内の大通り、Pasar Minggu Rayaでは横断歩道から次の横断歩道まで徒歩で約30
分、距離にして3km弱のあいだ、信号、横断歩道、歩道橋がないのだ。その代わり、交差点にはPolisi Cepek(インドネシア語で100ルピアの警察という意味)と呼ばれる人たちがいる。彼らは個人的に(政府や誰かに雇われているわけではなく、勝手に)交通整理をして、誘導した人やドライバーからチップを受け取る。
システマティックに働く信号機とは対照的に、彼らは極めてルールをもたない。子供から若者、大人や老人。フルタイムの生業としてやる者、仕事の合間の小遣い稼ぎとしてやる者。チップの値段にもルールはなく、まったくもらえないケースもある。インフラ= infrastructureとは社会を支える基礎的・公共的な施設という意味とともに、下部組織(構造)、基盤という意味ももつ。Polisi Cepekはまさしくこの街に宿った不定形のインフラストラクチャーだ。彼らがいなければ、道路の向こう側に渡ることさえままならない。
2014年に就任したジョコ大統領は、インフラ整備、社会保障充実、格差是正の3つの目標を掲げ、5ヵ年で50
兆円規模のインフラ開発計画をまとめた。その資金調達先にはもちろん海外からの資金も含まれる。
(2015年に安倍総理は、インドネシアのインフラ整備に協力することをジョコ大統領に告げる。)
ジャカルタの交通インフラが整備されるにつれ、Polisi Cepekたちはその存在意義を失っていくだろう。
何兆円もの金が動く組織は、上部組織=upper structureと言っていい。海外の組織は、外部組織=external structureとでも呼ぶとしよう。この二つのストラクチャーは一緒になって、まさに地べたのインフラストラクチャーを矯正する。上部・外部から下部・内部へと突き刺さる、その力のベクトルは、押し返すことのできない、まるで一方通行のベクトルだと感ぜずにいられない。そういう訳で、せめてジャカルタのこの地べたから各地の展覧会場へ、一羽の鶏を届けようと思う。