2016年に歌舞伎町商店街振興組合ビルで開催された個展「また明日も観てくれるかな?」と、2017年に高円寺のキタコレビルで開催された個展「道が拓ける」、ならびにそこで行われたパーティーやイベントからなるプロジェクト。2020年の東京オリンピックを前にして進行する東京の大規模な再開発の最中に行われた前者は、 取り壊し直前の歌舞伎町商店街振興組合ビル全館を使用。展示された作品群は、展示終了後もビルから撤去せず、ビルの解体とともにすべて破壊された。その後、解体されたビルや作品の残骸を拾い集めたChim↑Pomは、自らのスタジオでもあるキタコレビルに持ち込み、それらを素材に常設作品となる《Chim↑Pom通り》《The Road Show》などを制作した。
Statement
「道の開通にあたって」
この度、平成29年度より着手して参りました「道」が、東京・高円寺のキタコレビルに開通する運びとなりました。《Chim↑Pom通り》と命名したその道は、一般開放は24時間、近隣の公道や私道から、誰でも無料でご利用いただけます。
キタコレビルは、推定で築約70年、2棟の建物をつなぎ合わせてひとつとなって以来、霊能者による施設、風俗施設、廃墟、バーコンプレックス、ファッションビルなど、多様な経歴を経ながら、常に入居者たちによる増改築がDIYで進められてきた、見た目はバラックのような建造物です。2014年からはChim↑Pomもスペースを借り、自らのスタジオ、ギャラリー、ショップなどを運営してきました。
Chim↑Pomと建築家、周防貴之[すおうたかし]が共同で「道」を開通する場所は、そもそも2棟だった建物の間の、かつては道が存在していたと思われるところです。そこに再生するかたちで整備されました。が、屋内として使用されてきた長年の歴史もその風景に含まれるため、パッと見では、私的な空間なのか公的な場所なのか曖昧なまま施工されています。
いうなれば、プライベート空間の中にできた公共空間。そんな道として、今後ともChim↑Pomと不特定多数の皆様とで育てていけたらと思います。
ちなみに、Chim↑Pomは、かねてより公共空間やパブリックアートなどの私的利用を無断で繰り返してきたアーティストコレクティブとして知られており、公共という概念に関しては少なからぬ思いあると自負しております。ですので、いまのところはこの《Chim↑Pom通り》の利用にあたってのルールは設けるつもりありません。が、隣人、キタコレビルのほかの住人、当のChim↑Pomがさすがに必要だろうと判断した場合、随時ルールを設定する予定です。
自動車が通れる広さはありませんが、混雑時には速度制限を設けるかもしれません。
火災の危険が感じられた場合、路上喫煙を禁止するかもしれません。
あまりにセンスのない張り紙や落書きが横行した場合、「張り札」と「器物破損」を禁止するかもしれません。
パトロールを強化するほど暇ではありませんが、公共を謳う以前に、そもそもここは賃貸物件ですので、大家さんの気持ちを忖度する可能性は十分あります。
また、「道」のオープンに際しまして、展覧会形式のオープニングイベントを催します。
これは、2016年に新宿の歌舞伎町商店街振興組合ビルで開催されたChim↑Pomの個展「また明日も観てくれるかな?」を前半戦とすると、 その後半戦として開催される、現在の東京で乱発する「スクラップ&ビルド」をテーマにした展覧会です。Chim↑Pomは、この一連の活動を「Sukurappu ando Birudoプロジェクト」と名づけました。
「また明日も観てくれるかな?」展の終了後、ビルから撤去されることなく解体工事とともに半壊、あるいは全壊した作品の残骸が、本展のための新作の素材となり、キタコレビルもDIYな工事によって作品の一部となりました。
公的な側面と頑丈なコンクリート造りを有していた歌舞伎町商店街振興組合ビルに対し、 180度真逆の側面しかないキタコレビルは、プロジェクトにギャップと矛盾をもたらしつつも、そう遠くない未来にあるだろうビルの解体に向けて、ある意味、プロセスの場としても提案されます。
そして、いくつかの作品は、この展覧会で最終形として完成されるわけではなく、その時や会期終了を待つことで、完成品として日の目を見ることになる予定です。
とくに《Chim↑Pom通り》は、このオープニングイベントを機に、それ以降、皆様にどう利用されていくか。それ次第で性格を変化させるでしょう。
皆様のお越しと道のご利用を、心よりお待ちしております。
2017 Chim↑Pom
Sukurappu ando Birudoプロジェクト 道が拓ける(Chim↑Pom、周防貴之) (2017)