首釣り (2020)
ミクストメディア

「2020年10月の日本の自殺率は、前年比40%増の数字が出ている。そのような時勢以外に、この作品の制作動機は主に3つある。1つ目は、彼ら自殺者には一人一人に壮絶な事情があると推測できるが、それを体感することは不可能であり、個別に認識できるものでもない。つまり、見えない存在に近いと考えている。僕は同居していた義母を数年前に首吊り自殺によって失ったが、それを共有できる他人はいない。2つ目は、自殺とは言葉で言うものの、「自殺」とは本人の問題だけではなく、させる側の問題でもあると考えている。つまり、首を吊らせよ うという存在がいるのではないかということ。それは、権力者や社会なんていうものだけではなく、当然「私」も含まれる。3つ目は、一見悪ふざけに見えるこの作品の態度こそが、此岸に残された僕にとって彼岸への態度表明でありけじめであり、自身が強く生き続ける為の手段になるからである。落ち込んでいれば「悲劇のヒロイン病」と揶揄されて育った僕には、全てを自身が生き続けるための笑いにすることこそが必要なものであり、誠実な態度なのである。つまり表層的に落ち込んだ態度はそれに値しないものである。もしもこの作品を鑑賞して傷ついた人がいたならば、この作品を制作をしたことではなく、『松田修が生まれたこと』を謝罪します。」(2020年 松田修)