Garter Galleryにて開催された、Chim↑Pom結成10周年記念展。2011年あたりから激化した公的機関による検閲、展覧会主催者やキュレーターからの自粛の要請、そしてアーティスト自身による自主規制などをテーマとしつつ、10年間の活動のなかで妥協し受け入れてきた五つのケースを、リークするかたちで公開。規制の注文によって改変した作品群を、第二次世界大戦の敗戦を悔しさとともに告げた昭和天皇の玉音放送の一節「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び」を引用しつつ、自らの黒歴史として回顧した。
Statement
10周年を迎えるにあたり。
アートをマジでガチでやってきた最高の日々だったが、同様にまじで美術館や機関の検閲にクソみたいに屈し続けて来た最低の10年でもあった。
近年こういった問題が多く表に出回る様になったが、とはいえアーティストとキュレーターの個人的な資質に問題がシフトしたり、美術館が批判しやすい権力として単純化されてワイドショー的に盛り上がるなど、つまりは問題になった各々の作品が言及していたはずのバラエティーにとんだ社会的なイシューがフォーカスされることなく、20世紀的「表現の自由」をめぐるクソみたいな議論に終始しているように思う。
問題は、今突然おこった訳ではなく、これまでも実は人知れず繰り返されて来たクソみたいに理不尽な、しかし常識的だと水面下で交わされ続けて来たクソみたいな検閲と交渉の慣例にこそあり、その責任は、要求を伝えざるをえないクソみたいな事情を抱えている主催者だけでなく、「表現の自由」を表で謳いながらも、それらを受け入れ続けて来た全てのクソみたいなアーティストにもあったはず。
たしかにアートに関わるキュレーターや主催者は良い人ばっかだから、彼らとそんな低レベルな交渉するのはマジでクソみたいにめんどくさい。気まずい会議が長くなって、シリアスなうざい空気を吸ってお互いに寿命を縮めるくらいなら、代替案を考えますと外のフレッシュな空気に逃げた方がまだマシだった。
10周年を迎えるにあたり、そうやって積み重ねて来た自らの黒歴史を振り返り、Chim↑Pomは、改めてアートに本当に申し訳ないことをしたと思っている。そして結成以来ずっと向き合ってきたクソみたいな空気、更には現政権になって以来実際に、そしてとても具体的に厳しくなってきたアートへの介入、それと裏腹で進むクソみたいな戦後70年を前にして、堪え難きを耐え、忍び難きをを忍び、そんなクソみたいな黒歴史を10周年の記念として回顧したいと思う。
ちなみに本展で展示される5つのケースはChim↑Pomとしても氷山の一角であり、日本のアートシーン全体で言うと、この展覧会を広げていった先には途方も無く巨大な日本美術の回顧展が待ち受けるだろう。
僕らを支えて来てくれた日本のアートシーン、これまで本当にありがとう。そしてこれを機に前進できない組織とは、これでさようなら。
Chim↑Pom
2015年8月7日