臼井良平
PET (Portrait of Encounterd Things)
2012 1.28 - 2012 2.26無人島プロダクションでは、臼井良平 個展「PET (Portrait of Encounterd Things)」を開催いたします。
臼井はこれまで、私たちの身近にあるものを主役に、すでに存在するものの「見方」を変える、現代版「見立て」ともいえる作品を発表してきました。3年ぶりとなる本展では、2009年に開催した個展「encounter」で発表された写真シリーズ「Forgotten Liquid」の流れをくんだ新作を中心に構成します。
路上に放置されたプラスチック容器を撮影した前作「Forgotten Liquid」で臼井は、誰かによってぽつんと置き去りにされたペットボトルや空き瓶などに、都市で生活する人々の姿を重ね合わせ、一種のポートレート作品としてとして提示しました。本展ではその視点(視線)をもう一段階押し進めるように、その姿を「彫刻」としてとらえペットボトルなど市販のプラスチック容器の形態をガラスで制作した彫刻作品を展示いたします。一見、工芸品と見まがうような本作品は、ガラスの重みや感触とは裏腹に、そこにあるのはやはり我々にはおなじみのプラスチック容器であり、それは生活の中にある何気なさ、や、あたりまえ、であることの象徴のようにも見えてきます。
また、ベニア板の上に素材が並んだペインティング「何つくろう」の新作も発表いたします。このシリーズは、描かれている素材で「何ができるか」、鑑賞者に想像の中で完成してもらう作品です。その他にも「こんにゃく」でかたちづくった、へんてこ彫刻を「Soft Sculpture」として写真におさめた小冊子(ZINE)も展覧会に合わせて発行予定です。
タイトルの「Portrait of Encounterd Things」とは「日常の中で遭遇したものの肖像」のことをいいます。2011年は我々の想像をはるかに超える出来事に遭遇しました。震災の直後にスーパーなどから姿を消したペットボトル飲料水のモチーフ、そして今回作品に用いられている美しくもはかない素材に目を向けると、いまなお我々をとりまく不安定な状況と重なるところが少なくありません。一見、軽やかに見える作品の奥に見え隠れする臼井独特の批評眼をぜひご覧ください。