風間サチコ

電撃!!ラッダイト学園

2016 2.13 - 2016 3.6

無人島プロダクションでは2016年の展覧会第一弾として、風間サチコ展「電撃!! ラッダイト学園」を開催いたします。

この展覧会では、風間が「学校」という存在を暴力装置・機械とみなして作り上げたストーリーをシリーズ仕立ての作品にし、展示します。
本展タイトルにある「ラッダイト」とは、産業革命にともなう機械使用の普及により、失業のおそれを感じた手工業者・労働者が1810年代にイギリス中・北部の工業地帯で起こした機械破壊運動のことです。
そして、学校を舞台にした本展出品作の背景には、風間が小中学生時代で経験した理不尽な原体験、またそのときに感じた、学校内に潜む全体主義的なものへの懐疑が下敷きになっています。

風間が少女時代を過ごした1970年代後半から1980年代前半は、日本で多くの校内暴力が発生し、マスメディアも連日のように学校を現場とした様々な暴力事件を報道しました。またそういった社会現象化した校内暴力や番長をテーマにしたドラマや漫画もその時代、数多く発表されました。 ただ、2010年代も半ばにさしかかった現在では、目に見える、いわゆる「教室のガラスを割る」ようなわかりやすい反抗より、いじめや学級崩壊、そしてSNSの発達による子供たちのつながりなど、以前よりもっと外(の世界)からは問題が見えにくい、複雑かつ不可視なものに移り変わっているように感じます。とはいえ、それでもいつの時代も変わらないのは、学校における「個よりも全体」を重んじる風潮です。

風間が今回提示するのは、規律で指導される生徒、そこからハミ出した生徒、迫害される生徒、それら全てが暴力的になりうる可能性です。暴力装置とみなした学校のなかで、管理される生徒自らが暴力を手に入れ機械化するという皮肉で滑稽な空想戯画が風間版「ラッダイト運動」なのです。

そして風間は、この人生の上で避けては通れない教育システム、学校という子供の成長過程に大きく影響する狭い社会をモチーフにしながらも、現代社会に鬱積するルサンチマン、そこから生まれる小さな暴力がいずれ機械化し、機械化すなわち大きな暴力=戦争につながっていくであろう物語をラッダイト学園は示唆しているのです。
 学校と暴力という重たいテーマに取り組みながらも、風間独自のナンセンスな持ち味で表現された新作の数々を、ぜひ本展でご覧ください。