Installation view:(Drawing) Fractions of the Longest Distance [Mexico City ⇄ Jakarta], 2017, Venue: MUJIN-TO Production, Tokyo, Japan Photo: Kenji Morita
Installation view:(Drawing) Fractions of the Longest Distance [Mexico City ⇄ Jakarta], 2017, Venue: MUJIN-TO Production, Tokyo, Japan Photo: Kenji Morita
 Installation view:(Drawing) Fractions of the Longest Distance [Mexico City ⇄ Jakarta], 2017, Venue: MUJIN-TO Production, Tokyo, Japan Photo: Kenji Morita
Installation view:(Drawing) Fractions of the Longest Distance [Mexico City ⇄ Jakarta], 2017, Venue: MUJIN-TO Production, Tokyo, Japan Photo: Kenji Morita
Installation view: End of Summer, 2016, Venue: Yale Union, Portland, USA
Installation view: End of Summer, 2016, Venue: Yale Union, Portland, USA
The Raft of ______ (2016)
video, lambda print
3 min. 39 sec., 44 x 90 cm, Filming by Matt Jay, Photographing by Yukari Hirano

3,279人(2014年)、3,784人(2015年)、5,143人(2016年)。
3年間でこれだけの難民が地中海で溺れ、亡くなった。2016年では毎日14人の割合で死亡していることになる。
リビアからヨーロッパへ(途中で救助されることなく)無事到達することのできたゴムボートは、これまでに1隻もない。リビアからイタリアのシチリア島までの距離はおよそ450キロ。ある密航業者は、ヨーロッパまでの船旅は数時間程度で、「川を渡るようなものさ」と告げていたという。

以前インドネシアのマカッサル沖を中型船で航海した時、夜中、時化に見舞われたことがある。大きく上下に揺れる甲板に出ると、海はどこまでも真っ暗で何も見えない。遠くの海に雷が落ちた一瞬、辺り一面に大荒れの波のうねりが見えた。そのゾッとした感覚はずっと忘れられない。いま近くの川辺を散歩する時、橋を渡る時、その眼前の川がやがて海に流れ込み、その海が地中海に、または、あのマカッサル沖にまで接続していることを想像する。地中海のうえをゴムボートで漂流している人たちは、今まさに強い日差しに照りつけられているかもしれない、もしかすると灰色の空の下で雨に打たれている、あるいは、あの夜のように何も見えない暗闇のなかでうねる波に囲まれている。しかし、いくら連日のニュース(情報)と自分の過去の記憶を織りまぜ、川辺から想像 力を動員しても、地中海のうえの肌感覚は定かではない。ならば水の上に出てみればどうか?そこで、即席の筏での漂流を試みる。素材は170ガロンのレインバレル(プラスチック製の樽)x4、木製パレットx4、2人用テントが一つ。「川を渡るようなものさ」その密航業者の言葉通り、川を出発する。やがて力尽きたその場所で救難信号としてQRコードを掲げ、筏の位置情報を発信した。海で溺れる難民がいる限り、このQRコードに紐付けしたドメインを保持しつづける。それまで、WEB上でこの筏の漂流を継続させる為、Google Map上で表示される位置情報は、毎日変動していくようにした。僕らは実際にそこにはいない。が、僕らが居ないだけで、人がそこにいないとは言い切れない。水が持つ視覚的な抽象さから、世界の反対側を想像して欲しい。近くの川を流れている「水」も地中海にまで確実に繋がっているのだから。