八谷和彦
”初”ドローイング展~手で描いたものしか出しません~
2007 2.1 - 2007 3.31大ヒットメールソフト「ポストペット」の生みの親として、また映画「バック・トゥ・ザ・
フューチャー」に登場するエアボードを実際に実現させたり、お互いの見ているもの、聞いている音を交換する装置「視聴覚交換マシン」などを制作したアーティスト、八谷和彦。
彼の名前と作品は、アート界のみならず様々な分野に、そして世間に浸透しています。
その八谷の、「人生初」のドローイング展を2007年2月1日(木)より無人島プロダクションで開催いたします。
これまで八谷が制作し完成させた作品を見たり体験することはあっても、そこにいきつくまで、もしくは、そもそもなぜそれを作ろうと思い立ったか、の原点もしくはプロセスについては、彼のインタビューなどのテキストでのみ知られるところでした。
けれどもここ数年八谷が手がけてきた個人プロジェクトで、ジェットエンジン付一人乗り飛行機を作るという「Open Sky」では、テストフライトを観客に公開したり、制作過程をふんだんにもりこんだ映像を見せるなどして、観客を途中の段階から作品に引き入れてきました。私たち無人島プロダクションもその観客の一人でした。そうやって途中から参加するうちに、このあと作品ができるまでの「先の未来」へと向かう好奇心と共に、ふと「後ろの過去」を振り返りたくなったのです。
「八谷さん、一体あなたはなぜこういうものを作ろうと思ったの?」
この問いは、私たちだけではなく、皆がずっと持っていたものではないでしょうか。
プロセスを見せ、見る。けれども経緯と未来を作家の一歩後ろから追い続けるだけでなく、観客自身が関わることで発展させてきた「Open Sky」。未来はもう間近、そういうところで一度原点を見てみるのはどうだろう?ということで本展を企画いたしました。
八谷はこれまでドローイングの類いを一切発表してきていませんでした。それは、八谷が絵画を専門にしてきたわけではない、ということもありますが、彼にとってあくまで「作品」とはできあがった結果でした。にも関わらず八谷が描いてきたものはどれも、自分の頭の中にあるイメージを、まず「目の前の誰か」に「こういうものを作る」と伝えるものであり、そこに何よりも強い魅力と説得力があるのです。八谷のこの、「伝える」ためのツールとしてのドローイングは、何度もかき消されたり、何度も線をひっぱったり、数字や回路がかきこまれたりしており、どれも八谷の作品に対する思いといなんとかイメージを伝えようという意志が強く表れていて、見る側のこちらにとってはどれもとても愛おしい…!のです。
本展では、ドローイングと共に完成形の作品写真を並べて展示します。
それらを、目でなぞることで、「ものを生み出し作る」原点に触れていただければと思います。
尚、本展開催中にはICCにて八谷和彦久々の東京での個展「Open Sky 2.0」も併せてご覧いただけます(別紙参照)。
経過と結果を見つつ、そしてこの発想の元、を是非ご覧いただきますようお願いいたします。